十日に時雄は東京に帰った

[#8字下げ]八[#「八」は中見出し]

 十日に時雄は東京に帰った。 その翌日、備中から返事があって、二三日の中に父親が出発すると報じて来た。 芳子も田中も今の際、寧《むし》ろそれを希望しているらしく、別にこれと云って驚いた様子も無かった。 父親が東京に着いて、先《ま》ず京橋に宿を取って、牛...

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恋の力

 恋の力は遂に二人を深い惑溺《わくでき》の淵《ふち》に沈めたのである。時雄はもうこうしてはおかれぬと思った。時雄が芳子の歓心を得る為めに取った「温情の保護者」としての態度を考えた。備中の父親に寄せた手紙、その手紙には、極力二人の恋を庇保《ひほ》して、どうしてもこの恋を許して貰《もら》わねばならぬとい...

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その翌年の一月

[#8字下げ]七[#「七」は中見出し]

 その翌年の一月には、時雄は地理の用事で、上武の境なる利根《とね》河畔《かはん》に出張していた。彼は昨年の年末からこの地に来ているので、家のこと――芳子のことが殊《こと》に心配になる。さりとて公務を如何《いかん》ともすることが出来なかった。正月になって二日に...

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